北に富山湾、南に立山連峰を望む富山県滑川市。この土地に本社を構えているのが、株式会社エムダイヤです。1979年に創業、リサイクルプラントの製造・販売などの事業を行ってきました。今回お話を伺うのは、代表の森弘吉さん。
コンセプトの『―「もったいない!」をカタチに®―』を体現しながら働きやすい環境を整える取り組みや、地元富山県との関わりについてお聞きしました。
インタビュイー:森弘吉さん
株式会社エムダイヤ代表。趣味は読書と海外旅行。新しいことが好きで、多忙な海外出張の合間に周辺観光をするのが楽しみのひとつ。国内国外問わず多くの人と会い、「信頼関係を作る」ことを大切にしている。コロナ前の名刺交換数は、年間で1000人以上。多様な文化や考え方に触れることで「人としてどうあるべきか、どう在りたいか」を模索している。
インタビュアー:大西マリコ
取材やインタビューを中心に活躍するフリーライター。愛犬はシーズーのうどんちゃん。
捨てずに活かし、世の中にないものをつくる
「もったいない」から生まれるリサイクル事業
まずは事業内容について教えてください。
弊社では、リサイクル機械の製造販売、リサイクル事業、修理事業の3つの事業を行っています。なかでも特徴的なのは「エコセパレ」というリサイクル機械です。異なる素材のものを破砕、分離する機械で、取り出した素材を廃棄することなく再利用することができます。地球環境の保全にも貢献できる機械です。
基本的に我々は「世の中にない機械を作ろう」ということにずっと挑戦していて、今までは埋め立てや燃やすというような形で廃棄物にしかならなかったものが、再生されて資源として価値が出るということに対して非常に喜ばれています。
革新的な製品ですね!
弊社には『-「もったいない!」をカタチに―®️』というコンセプトがあります。それまでは埋め立てたり焼却したり、廃棄するしかなかったものが、再生されて資源となる。これってとても価値があることですよね。「もったいない!」を形にするために世の中にない機械を作ろう、ということで製品開発を始め、さまざまな挑戦を続けてきました。
リサイクル事業に力を入れている会社が多数存在するなかで、他にも御社ならではのアピールポイントはありますか?
はい、主に2つあります。1つは「自前主義」です。自社製品のほぼすべての素材を鉄板や丸棒の状態で購入し、自社で製作しています。
弊社は全社員十数名の小規模な会社です。この規模なら、設計後に社外で部品を作り、それを購入して組み立てるという手段が一般的かと思います。しかし弊社では未加工の素材の状態で購入し、それを溶接、機械加工、組付け、塗装、出荷、メンテナンスまですべて自前で行っています。
部品ひとつひとつを作り込むことで、弊社独自の技術が磨かれていくのが実感できます。ものづくりにこだわりを持って仕事ができますし、修理をする中でお客様に直接「ありがとう」と言っていただける機会があるのは嬉しいことですね。
もう1つのアピールポイントは「直接販売」です。弊社では大手企業とのお取引も多いのですが、その際に商社さんやエンジニアリング会社さんを通さずに直接取引させていただいています。
「直接販売」というのは珍しいことなのですか?
そうですね。おそらく、小規模な会社で直販体制を取れる会社は少ないと思います。これは取引先企業との信頼関係があるからできることですし、我々にしかない技術に対して評価いただいているからこそ、直接取引ができているのだと思います。ありがたいことですよね。
昭和と現代の良さを良いとこ取り
目に見える形で働きやすさを体現
お客様との信頼を大切にし、自前主義でものづくりに真摯に取り組む姿勢が印象的です。きっと社員ひとりひとりが誇りをもって働かれているのだと思いますが、そんなエムダイヤさんの職場環境についても聞かせてください。
社員は合わせて十数名ほどです。そのうち約半数が女性で、営業に関しては全員女性です。リサイクル業などの環境系、いわゆる3K(「きつい」「きたない」「危険」)の職場で女性が多い職場というのは珍しいことですよね。
私のスタンスは、働く社員を大切にすること。その取り組みの結果として「健康経営優良法人 2022(中小規模法人部門)」や「とやま健康企業宣言 銀(Step1)」、「ホワイト企業認定 GOLD 2021」、「とやま女性活躍企業」などの認定を受けています。
すごいですね。目に見える形で社員のみなさんを大切にされているのが伝わってきます。
「社員を大切にしています」と口で言うのは簡単です。大事なのは根拠を示すこと。こういった認定を受けることで、本当に働きやすい環境が整っている、という外部機関からの証明になっているのかなと思います。おかげさまで若い社員も多いです。
我々は「家族みたいな会社」「温かい会社」というのを目指してずっとやってきました。親世代と子世代が同居しているような、絶妙なバランスで成り立っているように感じます。もしかしたら今は流行らないかもしれないけれど、昔の昭和の時代の古き良きイメージの会社かもしれませんね。
とはいえ、いわゆる熱血系というわけではなくて、「土日はしっかり休む」「残業はしない」「時間内にしっかり働いて終業後はプライベートを楽しむ」といった今どきのスタンスもしっかり実現しているハイブリッド型です。
当たり前のことを当たり前にやる
人を、会社を変える強い信頼関係
今でこそ富山県を代表し、日本が誇る企業のひとつであるエムダイヤさんですが、森さんが代表になったばかりの頃は大変なことも多かったとお聞きしました。会社を設立した頃のお話も伺えますか?
父が創業したのが1979年で、設立が2005年です。2007年から会社名がエムダイヤに変わり、私が社長に就任しました。父は発明家気質で、どちらかというと経営に関しては無頓着でした。そういう意味で、2005年の設立からしばらくは色々な葛藤や軋轢がありましたね。
父が会社から離れた後、父に採用された年配の方々と私の経営方針とのズレが大きくて悩んだ時期もあり、社員と喧嘩もたくさんしましたよ。具体的な苦労エピソードは赤裸々すぎて言えないですけど、とにかく精神的に参っていて、ストレスから朝目が覚めたら眩暈が止まらなくて1週間入院したことがあるくらいに大変でした(笑)。
そこから脱出できたのは何かきっかけがあったのでしょうか?
「こういう会社にしたい」ということを何度も何度も繰り返し訴え続けました。すると少しずつですけれど私の考え方に賛同してくれる人が残り、そして新しく1人入り、2人入り……と増えてきて会社全体の雰囲気が変わっていったと思います。
時間もかけましたし、社内の仕組みも整えました。例えば「人としてどうあるべきか」といった人間教育です。朝礼でコラムを読みながら「これに対してどう考えますか」とアウトプットする取り組みをしたり、「サンキューカード」を作って努力を可視化して感謝を伝える場を作ったり。そういう意味では教育と経営は似ているなと感じますね。
「教育と経営は似ている」15年以上社長として奮闘してきた森さんならではの視点ですね!どういうところが似ていると感じますか?
私は、すべての人間関係は信頼関係から成り立つと思っています。信頼関係があるから人は動くし、信頼関係がなければたとえそれが正論だとしても、誰も聞いてくれません。だから、信頼関係を築くのは重要なことなんです。それはお客様であっても社員同士であっても同じ。
では信頼を得るためにはどうすれば良いか?それは、小さな約束事でもきちんと守るとか嘘をつかないとか、当たり前のことを当たり前にやること。これって小学校の道徳の授業と同じなんですよね。
しっかりとした信頼関係が築ければ「この人のために」「誰かのために」といったプラスの力が強くなり、会社がチームとして動けるようになるんです。
「やっぱり富山が1番!」
数多くの国を訪れ、改めて感じる魅力
富山県との関わりについてもお聞きしたいです。森さんは、生まれも育ちも富山県ですが、富山の魅力はどんな所だと思われますか?
私は仕事で県外や海外に行くことが多いのですが、富山は食事も美味しいですし物価も安い。自然も素晴らしく、立山連峰が見えて会社からは海が見下ろせます。遊ぶことを考えれば他の国や都市でもいいかもしれませんが、衣食住という意味で言えば富山は最高の土地だと思います。
富山県はとくに海鮮類が本当に美味しいですよね!森さんは富山県の食べ物で何がお好きですか?
好物は甘エビや白エビ、カニ、氷見うどんですね。寒ブリ等の海鮮類だけでなく、畜産物や果物も美味しいです。つまり、なんでも美味しいです(笑)。地元の回転寿司も美味しくて、東京なら5000円はするようなお寿司が富山なら1000円〜2000円で食べられます。他の土地と比べると「普通」のレベルが高いと思います。
東京の人にはよく「富山の人を接待するのが一番大変だ」と言われます。美味しいものを知っているから(笑)。山の幸も海の幸も、お米も美味しいでしょう?水も綺麗で美味しいからお酒が美味しくて、酒好きな人にとっては堪りませんよね。
海外との交流も多い森さんですが、外国の方たちからも富山県の食や観光はとても喜ばれそうですね。
海外の人のビジネスは、まず信頼関係から始まるんです。信頼関係を築くうえで富山の食と観光はひとつのきっかけになってくれていると感じます。弊社は『「休んでかれ。」宣言』(観光やビジネス等で富山県を訪れる方々を温かく迎え入れる取り組み)に加入していて、富山にお越しいただいたお客様のおもてなしをすることがあるんです。
日本国内だけでなくインドネシア、タイなど海外からもお客様が来られるのですが、リーズナブルな金額の定食を食べたら「この値段でこんな美味しい刺身を食べられるんですか!」と驚かれます。
もちろん私も海外によく行きますが、「これまでに訪れた国で良かった場所はどこですか?」と聞かれたら、やっぱり富山と答えると思います。「住み慣れた富山です」と。それくらい富山県は魅力あふれる土地だと思っています。
▼株式会社エムダイヤについてはこちら!
https://www.m-dia.jp/