今回やってきたのは、都道府県会館の中にある『富山県首都圏本部』。
立派な建物の中へ入ると地下1階には、各都道府県のパンフレットなどがぎっしりと並んでいます。
13階へ上がると富山県首都圏本部の受付が現れます。ここは一体どんな場所なのでしょうか?本部長を務める利川智さんにお話を伺いました!
利川智(とがわさとし)
富山県首都圏本部 本部長。福祉、医療、法務、秘書、財政、農業、税務などさまざまな業務に携わる。富山県首都圏本部本部長に就任し、富山の魅力を発信する活動を行う。
富山県首都圏本部ってどんなところ?
『都道府県会館』には初めて来ました。どういった場所なのでしょう?
利川智さん(以下、利川):この建物には44都道府県の東京事務所や全国知事会の事務局などが入っています。『富山県首都圏本部』は、首都圏で富山県の情報を受発信している場所です。
その主な役割は、富山県に必要な様々な情報を迅速に入手して地元につなぎ、また観光や物産、企業立地環境など富山の魅力を首都圏で積極的にPRすることです。
観光情報も集まっているので一般の人に訪ねてきていただいても良いですし、随時案内をしています。
▲13階の富山県首都圏本部の入口付近。ディスプレイにも富山の魅力がぎっしり。
富山の魅力を多くの方に発信している場所なのですね。
利川:そうですね。重要なのはそれをどう伝えるかということなんですが、『東京富山県人会連合会』(以下、県人会連合会)の方々は郷土愛も強く、とても積極的にPR活動されているんですね。一緒に活動しているとそういった姿に影響されます。
赴任後間もない頃はどのようにしてPRをすればいいのか分からないことがありましたが、「こういうことか!」と改めて富山の良さにも気づくこともあり、県人会連合会の皆さんの熱い思いに引っ張られることが多々ありますね。
県人会連合会と富山県首都圏本部は、互いに協力し合ってきたのですね。
利川:県人会連合会が毎年開催されている「懇親のつどい」では、県からも観光PR、ます寿司や蒲鉾などの物産販売をさせていただいたり、都内で開催する県の観光・物産イベントに県人会連合会から五箇山民謡を披露していただいて集客にご協力いただくなど、富山に対する思いは一緒ですから、とても心強い存在ですね。でも、富山県首都圏本部は元々はPRを主目的に発足した機関ではなかったんです。
▲観光案内などの各種パンフレットも揃っている。
富山の魅力をいかに伝えるか
富山県首都圏本部は元々はどんな目的のためにつくられたのですか?
利川:元々は、霞が関の本省と富山県庁とを結ぶ連絡調整窓口だったんです。今は北陸新幹線や羽田便があり2時間余りで富山から都心に来られますが、かつては交通手段も発達しておらず富山県庁と東京は遠くて、職員が出張するとなると必ず宿泊しなければならず時間もお金もかかりました。
そこで、東京に常駐する職員がいれば、霞が関や国会議員から情報をいち早くとってくる、あるいは富山県の情報をいち早く霞が関に伝えることができ、県としてタイムリーに制度や補助金を作ったり、あるいは富山県の状況を踏まえた制度創設や補助金を国に要望したりする際にも便利です。そのために霞が関や国会に近いこの場所に事務所をつくったんです。
そうだったのですね!そこにPRという任務が加わったのはなぜだったのですか?
利川:物やサービスが東京に一極集中したことから、全国的にもっと分散型のまちづくりをしようという流れが加速したことも理由のひとつですね。お陰様で富山にUターンする人や移住する人も増えてきましたね。
そういった動きの中で、いかに富山の魅力を発信していくか、ということが重要視されるようになりました。
富山の場合は、2015年に北陸新幹線が開業したことで、首都圏へのアクセス時間が格段に短くなり、それをきっかけに東京だけでなく首都圏全体に情報を拡散し、富山にもっと人を呼び込んでいこうとなりました。その際に富山県東京事務所という名前も、富山県首都圏本部に変えたのです。
さらに、昨年来のコロナ禍を通じて東京一極集中型の社会構造のリスクが改めて認識されるようになり、実際にテレワークが進み、都内から地方に移住する方も増えつつあります。この機をとらえて、これまで以上に富山県の魅力を発信し、二地域居住やUIJターンされる方が増えればと思っています。
なるほど。そんな歴史があったんですね。本部長の業務は具体的にどういった内容なのでしょうか?
利川:霞が関の本省や本県選出の国会議員との連絡調整、観光・物産PR、首都圏企業の富山への誘致という、大きく3つです。
富山の観光・物産PRとして是非お伝えしておきたいのは、都内に二つある県のアンテナショップです。一つは有楽町にある『いきいき富山館』で、蒲鉾や地酒などの富山の物産を販売しており、特にます寿司などの実演販売が人気です。
もう一つは日本橋にある『日本橋とやま館』です。「富山の上質なライフスタイルを提供」をコンセプトに、物産販売に加え、和食レストラン、バーラウンジ、観光交流サロンもあります。是非一度行って富山を堪能してみてください。
▲「コロナ禍の今、いかに富山の魅力を伝えるかが課題です」と利川本部長。
上京して恋しくなる、富山の“当たり前”
利川さんは、東京での生活が長いのですか?
利川:いえいえ、ずっと富山県庁に勤務していましたが、2016年から2年間この首都圏本部に勤務し、2018年に富山県庁に戻ったんですが、どういうわけか1年後の2019年に再び首都圏本部に勤務しています。
根っからの富山県民で、東京には縁もゆかりもないし、家族は富山にいるので、ひとりで気楽な半面、寂しいこともありますよ(笑)。
富山を離れたことで、富山に対する思いは何か変わりましたか?
利川:富山の当たり前が東京では当たり前ではないんだなと気が付きました。一番は水ですね。富山には名水がたくさんあり、水が本当においしいんです。蛇口から出る水でもすごくおいしいですよ。
自分は米農家だからかもしれないですが、米の味も全然違うなと感じます。だから当然、地元で採れた米を持ってきてこちらでも食べています。
それと富山には、高岡の御車山祭や、越中八尾のおわら風の盆といった有名な祭りがあり、暮らしになくてはならないものです。富山に居るといつでも見られるということで、結局は、なかなか行かないんですが、離れてみてから、祭りが恋しくて、行きたい!という思いが強くなるんです。そういった富山の文化や伝統工芸の魅力を伝えるのも私たちの使命です。
▲富山県首都圏本部に勤務する皆さん(テレワーク体制のため出勤者のみで)。
オンラインイベントで富山の魅力を発信
今後やっていきたい活動はありますか?
利川:どういう手段で富山の魅力を伝えていくかが大きな課題です。これまではアンテナショップの日本橋とやま館に人を集めて、リアルで伝えるというのが主なやり方でしたので、コロナ禍の今は非常にやりづらいですね。
最近は、日本橋とやま館でのイベントなどに加えて、オンラインイベントなども開催しています。富山の飲み物や食べ物、お酒やおつまみをお届けして、日本橋とやま館の料理長が富山の名産について説明したり、農作物について解説をしたりなどしています。
このオンラインイベントに参加した人からさらに拡散していただいて、富山の魅力が若い人にももっと広がると良いですね。これからはオンラインツアーもやっていけたらと思っています。
富山に興味がある方や食に興味がある方など、どんな方でも参加できて、みんなで富山のおいしいものを食べながら交流できるとても楽しいイベントですよ。
▲オンラインイベント「豪華・富山グルメ便が届く!おうちで旅気分の富山パーティ」(令和3年1月29日)
▲オンラインイベント参加者に事前に送った「富山グルメ便」
ところで利川さん、先程富山の魅力のひとつに“水”とおっしゃいましたが、ベスト3を挙げるとしたら何でしょうか?
2位は立山連峰かな。やっぱりこれ抜きに富山は語れないよね。これは本当に素晴らしい絶景で、海越しに3000m級の山々が見られるところは世界の中でも極めて稀なんです。
▲雨晴海岸から望むことができる、富山湾越しの立山連峰。
富山湾は、ユネスコが支援する「世界で最も美しい湾クラブ※」に平成26年10月に加盟しました。立山連峰を望む貴重な景観は富山県の宝物です。
3位は人柄かなあ。富山の人はちょっと奥ゆかしくて恥ずかしがりやなんです。私みたいに(笑)。でも、ちょっと入り込めば非常にあったかいんですよ。
それと忘れちゃいけないのは、大相撲の大関朝乃山とアメリカプロバスケットボールNBAの八村塁!富山出身のそのふたりが大活躍してくれることをとっても期待しています。是非がんばって富山だけでなく日本全国を盛り上げて欲しいですね。
利川本部長の選ぶ、富山の魅力ベスト3
1位:水
2位:立山連峰
3位:人柄
忘れちゃならないのは、朝乃山・八村塁!
取材を終えて
富山県首都圏本部へおじゃますると、職員の方々の富山への熱い思いが伝わってきます。魅力の発信だけでなく、さまざまな情報伝達のためにも奔走する利川本部長や首都圏本部の皆さんのおかげで、富山と首都圏の距離が近くなり、改めて富山に注目が集まっていることを実感しました。今後盛り上がりをみせる、オンラインイベントについても楽しみです!
▼『日本橋とやま館』についてはこちら
https://toyamakan.jp/
▼東京富山県人会連合会HP
https://www.toyamakenjin.tokyo/